これはLARP Advent Calendar 2020用に作成した記事です。執筆者:月魚
ここに記載している内容はダンジョンダイバーのシナリオ集を作るために内部公開したものの抜粋です。
「シナリオのアイデアはあるけど、LARP用のシナリオってどういうことを書いたらGMさんやNPCさんたちがわかりやすいの?」という人へ、例えばこうしてみるといいよというものです。
シナリオ自体を作るためのハウトゥーガイドではありませんのであしからず(それは私が知りたい!)
自作シナリオで自分がGMをする場合は好きに書くといいよ!(でもNPCさんたちが困らないようにしてあげてね!)
シナリオを書く順番
このとおりである必要はありませんが、本編を読む前にあらすじや出てくるNPCを知っているとシナリオの理解度が早くなります。
- シナリオ概要
- このシナリオについて
- 必要な物リスト(必ず必要な物、あるといい物など、見立ての場合は簡単な作り方など)
- 登場人物一覧(簡単な設定があるとよい)
- 冒険の舞台の紹介と導入
- 本編
1.シナリオ概要
シナリオジャンル・キャッチコピー
シナリオを端的に表すキーワードを記載するといいでしょう。
例:ランダムダンジョン探索、謎解きありの喜劇、慈悲はない、ホラー要素あり
必要推奨人数
このシナリオを遊びために必要な人数を記載します。
例:PCは3~5人、NPCはPCと同数±1人。
推奨レベル
ダンジョンダイバーにPCレベルはないのですが、モンスターランク(MR)でシナリオの困難さを表現できます。どのランクのアイテムを初期装備とするかで強さを変えることが出来ますので初期装備に必要なゴールドの記載をするといいでしょう。(キャラメイク時の所持金もありますのでそれらも合算されます)
魔法を使うための魔術書や聖書は高価です、使わせたい魔法書は予め所持していることにしても構いません。
参考
モンスターランク | 冒険者の目安 | 装備を整えるための初期G |
MR1 | 初めての冒険 | ~150G |
MR2 | 脱初心者 | ~300G |
MR3 | 中級冒険者 | ~500G |
MR4 | 界隈で有名な冒険者 | ~5,000G |
MR5 | 誰もが知る一流冒険者 | ~15,000G |
※回復薬と装備各種をセットで買えるぐらい(パーティー間の譲渡あり)
参考:各階層(MR)のモンスタースペック
階層 | 最高HP | 平均HP |
1 | 6 | 3.0 |
2 | 6 | 4.4 |
3 | 10 | 5.1 |
4 | 15 | 7.5 |
5 | 15 | 11.0 |
開催場所
狭い場所でも遊べるのか、広い場所が必要なのか想定している会場の広さを記載しましょう。
想定時間
ショートシナリオ:2時間程度
ロングシナリオ:4時間程度
※上記時間に休憩やシーン切り替えの準備時間もかかります。
※あくまで目安です。この時間内に収めないとダメなわけではありません。
各シーンの参考時間
非戦闘シーン(会話・探索など):10~20分(PC間で相談の必要があったりすると長くなりがちです)
戦闘シーン:5分~10分(1ターンはスムーズに進むと2分程度です)
※ショートシナリオの場合冒頭の情報収集時間を飛ばすと短くなります。情報収集までを事前に伝えて、「準備を終えた君たちはダンジョンの前にいる」からスタートするのもいいでしょう。
2.このシナリオについて
シナリオの全体像を5~10行程度のテキストで紹介すると読む側が全体を理解しながら読み進めやすくなります。
例:
洞窟に巣食ったゴブリンを退治する初級冒険者向けのオーソドックスなシナリオです。推奨プレイヤー人数は6 ~8人です。人数の半分以上はNPC にします。
冒険者たちは酒場で依頼書を見つけて小さな村にやってきます。村の聖なる洞窟に巣食ったゴブリン退治と儀式に必要な道具を取り戻すことが目的です。 ゴブリンが巣食う洞窟に出発しようとしたとき、村の巫女からその道具を見つけても壊して欲しいとお願いされます。 ゴブリンを倒して儀式の道具を見つけた冒険者達が、どのような選択をするのかを葛藤してもらいます。 |
3.必要なものリスト
このシナリオに必要なものを記載しておきましょう。
特殊なものは見立てで用意できるように、見立ての作成例があるといいでしょう。
用意するもの
用意できるといいもの
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4.登場人物一覧
簡単な紹介も書かれているといいでしょう
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5.冒険の舞台の紹介や導入
冒険の舞台はGMやプレイヤーたちが場面を想像しやすいような紹介をしましょう。
導入はショートシナリオでGMが事前にPCたちに伝えて時間を短縮するために、またはその内容を参考に導入場面を作るために記載しておきます。本編に導入を含む場合は不要です。
冒険の舞台
王都から3日の距離にある30人程度が住む小さな村「シックスベリー村」。自給自足で暮らすどこにでもある小さな村です。村の周りは森で囲まれており、他の村との交流はあまりありません。 導入 PCたちは定宿の酒場で1枚の依頼書を見つけます。そこには村の聖域がゴブリンの住処となってしまったことと、そのゴブリンを退治して聖域から神器を持って帰ってきてほしいことが書かれています。報酬は一人500G。 |
6.本編
シナリオのメイン部分です。
各シーンごとにGMのシーン描写、登場人物のスペックやセリフとキーワード、モンスターのスペック、入手できるアイテムなどを記載していきます。
GMとNPCが見てイメージしやすい内容にしましょう。
シーンの記述例
シーン「村長宅」 効果音「暖炉の火が燃える音」 テーブルの下に宝箱(罠なし、解錠難易度7):回復薬、10GGM「あなた達は3日間の移動を終えて太陽が真上に登る頃にベリー村に到着しました。村長の家は村の中心にあり、他の村人たちと同じように質素な石壁の家です。あなた達は厚い木の扉の前に立っています」 ノックをすると村長が出てくる。村長は冒険者を見ると依頼した冒険者とわかってすぐに家の中に招き入れる。 部屋の中に入ったなら GM「部屋の中には大きな暖炉と10人は座れそうな大きなテーブルが置かれています」 村長は事情を話して冒険者に正式に依頼をしてください。 村長 男名:レイモンド、女名:レイチェル 45歳 持っている情報 ・報酬は一人1000G。 巫女の儀式について ・村には巫女がいて1年に1回儀式を行う。 会話例 「ようこそ、よくお越しくださいました。長旅でお疲れでしょうが、まずはお話を聞いてもらえますか」 「我々の村では一人の巫女が1年に1回儀式を行います。その儀式を行わないとよくないことが起こると伝えられていて今年も執り行なおうとしたのです。しかし、儀式を行う洞窟にいつの間にかゴブリンが住み着いてしまっていて。そのゴブリンを退治して儀式に必要な道具を持ち帰って欲しいのです」 |
※これ例はシナリオのメイン情報源のため情報量が多いです。
GM用にシーン描写をいれる。
目の前の風景が思い浮かぶようなセリフを入れましょう。ただしあまり細かすぎると聞いているPCは覚えていられません。特徴的な部分をピックアップするといいでしょう。
伝えると良い情報
- どこに居るか
- 今何時ぐらいか(太陽は真上だ。満天の星空だ。木の影が長く伸びている)
- 目立ったものを伝える(床にはホコリが積もっている。目の前に大きな木がある)
- 出入り口を伝える(右と正面に扉がある)
NPCのセリフ例は簡単に
「このセリフを語らせたい」と長いセリフを詳細に書きすぎると、慣れてないNPCは棒読みになりがちです。大事なキーワードや言ってはいけない事などを箇条書きにして、できるだけNPC役が自分でキャラの人格やセリフを作れるようにしましょう。
シナリオ集の場合その役は誰がするかわかりません。必ずではありませんが男性・女性が入れ替わっても大丈夫なようにしておくといいでしょう。
戦闘対象となるキャラのスペックを入れる
ルールブックに記載はありますが、見比べる手間をなくすためにHP/MP/AGI・使用武器・スキルの基本スペックは記載しておきましょう。
オリジナルモンスターを出すときは、モンスターの特徴や衣装例なども入れると良いです。
記載例(四角で囲うと見やすいです)
ラミア 不確定名:這いずる者 HP4/MP0/AGI6 武器:短 スキル:毒 |
入手できるアイテムのスペックを入れる。
モンスターと同様アイテムもスペックを入れましょう。鑑定が不要な場合はその旨も記載しましょう。
記載例(四角で囲うと見やすいです)
ドラゴンスレイヤー 未鑑定名:鱗柄の長剣 装備条件:戦僧侍騎 売却額:500G 効果:AGI+4 |
判定の基準値を入れる。
宝箱の解錠や罠解除など、判定が必要な場合は目標値を記載しましょう。
標準的な冒険者なら成功する難易度:目標値7
配置図
簡単な配置図があるとシーンのイメージが伝わりやすくなります。
★たいていNPC役の人がシーンづくりを手伝います。シーンに登場するアイテムやモンスターのスペックを記載しておくと便利です。
※上記は80㎡の部屋想定です。
※作成にはGoogleスライドが便利です。
https://www.google.com/intl/ja_jp/slides/about/
LARPのシナリオを作るときのワンポイント
実際に遊んだり作ったりして、LARPではこういうことに気をつけておくといいなと思ったことです。
誰もが遊べるように
仲間内だけで楽しむシナリオであれば気にしなくて構いませんが、公開シナリオを作るときに気をつけたほうがいいこと。
- 特別な道具が必要であったり、特殊な技術が必要なものは避けましょう。
- 男性女性関係なく誰でも遊べるようにしましょう。
女性のNPCしか出てこないなど性別を特定するのはできるだけ避けましょう。 - NPCにも楽しんでもらえるようにしましょう。1シーンしか出番がない、決められた台詞を話すだけなどは楽しくありません。NPCもキャラクターとしてある程度自分の好きなようにロールプレイができたり、ちょい役なら戦闘も含めて複数回登場できるようなシナリオにしましょう。
- 情報源としての役割だけなら細かい設定は書かずに必要な情報だけを列挙して、NPC自身がキャラメイクできるようにしてもいいでしょう。
例:
猟師(設定は自由)
持っている情報 |
猟師(キャラ設定の改変可)
設定例:寡黙で頑固な性格で森の中で一人で暮らしている。村には獲物を売りにやってくる。 持っている情報 |
LARPらしいシナリオにするために
TRPGと違いLARPでは実際に見て、聞いて、触ってと五感での体験を使ったものを盛り込むと良いです。
◎判定ではなく実際に隠されたものを見つける
- 壁にある小さなスイッチ
- テーブルの裏の貼り紙
- 道に落ちている金貨
など実際に見つけられるものを設定します。
冒険者が気づかない場合は判定をして見つけられるようにしてもいいでしょう。
◎体を動かす
- 的にボールを当てる。
- 箱に開いた穴の中に手を入れて物を触る。
- ロープから踏み出さないように歩く
実際に体を使ったシーンを設定する。技能がある場合は的に近づけるなどできるようにしてもいいでしょう。
◎目の前で変化が起こる
ストップを活用して、目の前のシーンが変化するようにします。
- 魔法陣に宝箱が現れる
- 幽霊が消える、現れる
- 物が移動する
◎リアルタイムな時間を作る
即座に判断して行動を起こさないと駄目な状況を設定します。
- 壁が迫ってきて逃げるか進むか決めないといけない。
- 一定時間内に離れた場所のスイッチを押さなくてはいけない
- 一定時間ごとにモンスターが現れる
ダンジョンダイバーらしいシナリオにするために
ダンジョンダイバー特有の要素を入れるとそれっぽくなるかも
- 前・中立・悪の信条による葛藤や行動のバリエーションを出せるように。
- 手に入る財宝はランダムアイテムにしてPCにダイスを振らせる。
- 特徴的な種族をNPCでだす(冷酷なエルフ、豪快なドワーフ、陽気なハーフリングなど)
- 特徴的な職業をNPCでだす(侍、忍者など)
ゲームバランス
LARPの戦闘はPCのリアルな技量により大きく左右されます。
「ボスの脅威を与えたかったのにすぐに殺されてしまった」「強すぎてPCを全滅させてしまった」ということも多々起こりえます。
このようなことが起こらないようにモンスターの基本設定に特別処置を入れてもいいでしょう。
・1ターン目はダメージを受けない。(ただし気付かれないようにダメージを受けているようにはみせる)
・魔法使い単独で出すと瞬殺されます。必ず前衛を起きましょう。2ターン必要な魔法を使いたい場合は、1ターン目の前衛はダメージを受けない。などしても良いでしょう。
あなたが作ったダンジョンダイバーのシナリオがあればぜひ教えて下さいね!